【多くの脊椎手術を執刀】函館中央病院【院長の人生ノート38】

 函館中央病院は函館市の中心地である五稜郭地区にある総合病院で、函館市の中核病院の一つです。整形外科は特に患者の多い診療科で、橋本友幸先生(元病院長)、金山雅弘先生(現病院長)を中心に、道南地域の整形外科医療を支えて続けてきた病院です。その中でも脊椎疾患に対する治療は特に力を入れており、私が赴任したときは北大だけでなく、順天堂大学などからも脊椎外科医が来ており、脊椎外科医だけでも7名が所属し北海道内でも最大規模でした。

 函館に赴任したのが、2019年10月、それから半年も経たないうちにCOVID-19のパンデミックが始まり、巷ではロックダウンが叫ばれるようになっていました。ただ、私は幸いと言うのは憚られますが、パンデミックの時期に大都市ではなく函館という地方都市にいたため、ロックダウンの困難さをあまり実感することはありませんでした(実際には函館市内でも市民の皆様は感染に注意して過ごされていたのだと思いますが)。幸い、私の周囲ではCOVID-19の流行は見られず、私も家族も感染することなくパンデミックは過ぎ去っていきました。

 函館中央病院では非常に多くの脊椎手術を執刀させて頂きました。脊椎センターの所属で脊椎疾患のみの診療に集中させていただいたこともあり、年間約120例以上の脊椎手術を執刀し多くの経験を積みました。おかげ様で、一人前の脊椎外科医としての一つの指標である脊椎脊髄病学会の外科指導医を取得することができました。

金山雅弘先生、田中将先生とボストンにて

 函館で習得できた一つの手術手技として胸腰椎移行部の前方手術があります。北大整形外科の元教授である金田清志先生は胸腰椎移行部の前方手術の世界的権威であったのですが、函館中央病院はその伝統を引き継ぎ胸腰椎移行部の破裂骨折などに対しては前方アプローチによる前方単独除圧固定術を行っておりました。私もその方法を取り入れ、前方手術の手技を習得することができました。

 他にも、函館中央病院の素晴らしい点として、脊椎手術に関するデータが豊富に蓄積されていることが挙げられます。金山先生を中心に脊椎手術の術前・術後の臨床スコアなどのデータを長期間、体系的に集計しておりデータが蓄積されていました。これらのデータを解析して臨床研究を行い、論文発表をすることができたのです。

 大学院を卒業する際に、須藤先生から「自分で論文を作成して世の中に情報を発信していけるような医師になりなさい」と言われことは心に残っています。私自身も情報を発信することは大事なことだと考え、出来るだけ臨床研究や論文作成をするように努めてきました。仮にも「医学博士」の称号を持った以上、そのように努めることは世の中に対する義務ではないかと考えたからです。

 大学院を卒業してから斗南病院では日本語論文1篇・英語論文1篇を、北海道せき損センターでは英語論文3篇、大学でも英語論文1篇を、研究ネタを自分でひねり出して論文作成するように努めてきました。函館中央病院でもそのように考え、豊富にあるデータからいくつかの研究テーマを考え、学会発表や英語論文投稿を行うように努めました。また、脊椎外科希望の若手医師の論文指導も行い、函館在任時の研究として、私自身が筆頭著者で4篇、後輩の医師の論文の責任著者として3篇の英語論文を発表することができました。

 函館中央病院では研究の成果を毎年、国際腰椎学会(ISSLS)で発表することが恒例となっており、私も在任中は毎年ISSLSに参加しておりました。ただ、私が函館に赴任してすぐにCOVID-19によるパンデミックが始まったため、残念ながら2020年、2021年はWebでの参加となり現地開催されませんでした。しかし、パンデミックが収まってきた2022年に米国ボストンで開催されたISSLSには現地参加することができました。

ボストンのハーバード大学構内にて(2022年 ISSLS)

前の話を見る

次の話を見る

最初から見る

シェアしていただけると嬉しいです!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次