【第1回】フレイルとは? ― 健康寿命を縮める“最初のサイン”

現在の日本は、65歳以上の人口が29%を超える超高齢社会に突入しています。
このような社会では、健康なまま日常生活を送れる期間(健康寿命)を延ばし、生活に制限が生じる期間をできるだけ短くすることが非常に重要です。

要支援・要介護となる主な原因のうち、約25%は運動器の障害が占めています。
そのため、運動機能を維持・向上させることは、超高齢社会における最優先の課題のひとつと言えます。

整形外科医としては、痛みやけがの治療に加えて、将来の介護リスクを減らすための予防や機能改善に取り組むことが重要な責務だと考えています。

このコラムでは、数回にわたり、高齢者の健康寿命を延ばすためにできる具体的な取り組みやポイントをご紹介していきます。

目次

【第1回】フレイルとは?~健康寿命を縮める最初のサイン~

超高齢社会を迎えた今、まず知っておきたいのが 「フレイル」 という考え方です。
フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間に位置する“加齢による虚弱状態” を指します。

加齢とともに、筋力・体力・活動量・認知機能・栄養状態などが少しずつ低下し、放っておくと要介護へと進行してしまう“最初の段階”とも言えます。ただし適切なケアによっては健常状態に修復可能な状態になります。

なぜフレイルが問題になるの?

フレイルの状態にある高齢者は、以下のリスクが高まります。

  • 転倒・骨折が増える
  • 感染症や病気の重症化が起こりやすい
  • 日常生活動作が低下(歩けない・外出が減る)
  • 認知症の発症リスクが上昇する
  • 介護が必要になる時期が早くなる

つまりフレイルは「放置すると取り返しのつかない状態に近づくサイン」なのです。

フレイルの3つの領域

フレイルは、身体的フレイル、精神・心理的フレイル、社会的フレイルに分類できます。
フレイルの発症には様々な要素が関連するため、個人の身体機能や認知機能、精神面を考慮して疾患治療や栄養管理を行うなど、多面的にサポートを受けることが必要になります。

フレイルの早期発見のために

J-CHS基準では、次のように示す5項目について、評価基準に3つ以上該当した場合にフレイルと診断します。なお、1~2つ該当した場合は、フレイル前の段階である「プレフレイル」と診断されます。

項目評価基準
体重減少6ヶ月で2㎏以上の(意図しない)体重減少
筋力低下握力:男性<28㎏、女性<18㎏
疲労感(ここ2週間)訳もなく疲れたような感じがする
歩行速度通常歩行速度<1.0m/秒
身体活動①軽い運動・体操をしていますか?
②定期的な運動・スポーツをしていますか?
上記の2つのいずれも「週に1回していない」と回答
日本版CHS基準(J-CHS基準)

3つ以上該当の方:フレイル
1~2つ該当の方:プレフレイル

日本では、横断歩道を1m/秒の歩行速度で渡り切れるように青信号の時間が設定されています。つまり歩行速度が1m/秒を下回ってしまうと、日常生活に支障をきたすと言えます。

フレイルは「予防」も「改善」もできる

大きな特徴は、適切な対応をすれば改善できるという点です。

  • 筋力を維持・向上させる運動
  • 十分なタンパク質と栄養摂取
  • 社会参加を増やす取り組み
  • 痛みや病気の早期治療

これらを組み合わせることで、健康寿命を大きく伸ばすことが可能です。

整形外科が果たす役割

私たち、地域のかかりつけ整形外科クリニックでできることは以下の通りです。

  • 痛みによって動けない状態を改善
  • 転倒しやすさの原因を分析
  • 筋力や歩行機能の評価
  • 理学療法士によるリハビリ
  • 骨粗しょう症の診断・治療
  • フレイル進行の“入口”を早期に発見

運動器を専門に扱う整形外科だからこそ、フレイル予防・改善に直結するアプローチが可能です。

次回(第2回)の予告

次回は、フレイルとも深く関係する 「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」 について詳しく解説します。
筋肉量が落ちると何が起こるのか、どんなサインに注意すべきか、予防するにはどうすればよいか、日常生活にすぐ役立つ内容をお届けします。

▶監修:辻本武尊(枚方大橋つじもと整形外科クリニック院長・医学博士)

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