アキレス腱付着部症

原因

アキレス腱とかかとの骨が接する部分には、強い引っ張る力が加わります。また、その少し上では腱と骨が互いに圧迫し合っています。これらの力が繰り返し加わることで、付着部分が変性し、痛みが生じます。

主な原因
  • かかとの骨や足の形の異常
  • 過度な使用(仕事やスポーツなど)
  • 肥満などによる、過度な体重増加
  • ハイヒールや足に合わない靴の常用

特に、つま先がとがったデザインの靴や高いヒール、ヒールの先が細く不安定になりやすい靴は、足への負担が大きく、アキレス腱付着部炎のリスクを高める原因になります。

成長期のリスク

成長期には、身長や体重が急激に増加する一方で、腱の付着部の発達が追いつかないことが多くあります。このため、アキレス腱付近の組織にトラブルが起こりやすく、痛みや炎症を引き起こす場合があります。

病態

アキレス腱付着部症は、繰り返し負荷がかかることで、アキレス腱とかかとの骨が接する付着部に変性が生じ、痛みを引き起こす疾患です。これは、腱や靭帯の付着部に起こる障害(エンテソパチー)の一種です。

組織の変化

症状が進行すると、以下のような組織の変化がみられることがあります:

  • 肉芽形成
  • 石灰化
  • 骨化

また、X線検査では、アキレス腱部分に骨棘(骨のとげ)が突き出ている様子が確認されることもあります。

症状

アキレス腱とかかとの骨の付着部周辺に痛みや腫れが生じます。特に、足首を上向きに曲げたときに強い痛みを感じるのが特徴です。症状が進行すると、安静時にも痛みが続くようになり、日常生活に影響を及ぼすことがあります。また、かかとの部分が深い靴を履くことで、患部が圧迫され、痛みが悪化する場合もあります。

主な症状
  • 朝起きて足を地面に着けて歩き始める際に鋭く強い痛みが生じる。
  • 座った状態から立ち上がりや歩き始めに刺すような痛みを感じる。
  • アキレス腱を押すと痛みがある。
  • 靴による圧迫で痛みを感じる。
  • 足首を強く曲げると、かかとの下側に突っ張るような痛みが現れる。
  • 階段を降りる際につま先を着けたときに強い痛みが生じる。

診断

次のような症状が認められる場合、アキレス腱付着部症と診断されます。

  • アキレス腱付着部や周囲の滑液包に圧痛(押さえたときの痛み)や持痛(つまんだときの痛み)がある。
  • 階段の上り下りや歩行時にアキレス腱付着部に痛みが生じる。
  • かかとの骨折やアキレス腱断裂など、他の疾患とは区別される。

治療

保存的療法・理学療法

足の形に合った靴を履き、足底挿板(靴の中敷き・インソール)を装着します。また、アキレス腱のストレッチを行い、腱への負担を軽減します。

薬物療法

痛みを和らげるために、非ステロイド系消炎鎮痛薬の外用剤や経口薬を使用します。痛みが非常に強い場合には、ステロイド剤を局所注射することもあります。

    手術療法

    重症の場合、腱が変性した部分や橈骨後上隆起(かかとの骨の出っ張り)の一部を取り除きます。最近では内視鏡による手術が行われます。

    予防

    アキレス腱付着部炎を予防するためには、以下の対策が有効です

    • 運動前に足首ストレッチを行い、アキレス腱に過度な負担がかからないようにします。
    • 足にしっかりフィットした靴を履くことが大切です。
    • 長時間のハイヒール着用は控えましょう。
    • 足底が固すぎない靴を選び、長時間の運動やジョギングなど、足に衝撃が加わる運動を行う際に配慮します。
    • かかと周囲に痛みがあるときは、専用のサポーターを使用します。
    • 食生活や運動習慣を整えて肥満を予防することも重要です。