上腕骨近位端骨折
原因
全骨折の4~5%を占め、骨粗しょう症を背景に高齢者に多発します。
その他に糖尿病、体重減少、外出の少なさも危険因子として知られており、高齢者の80%は立った高さからの転倒(低エネルギー外傷)で生じます。
若年者では交通事故などの高エネルギー外傷により生じます。
骨折部位は骨頭、大結節、小結節、骨幹部の4つに分かれる傾向が強く、どこに骨折・転移があるかで分類(Neer分類)されます。80%は転移が少ないタイプです。

症状
肩が痛くて動かすことが難しく、肩の腫れ・変形・皮下出血がみられます。皮下出血は、2~3日後には肩から胸、上腕に広がり徐々に吸収されます。
交通事故などの強い外傷による受傷の場合は、鎖骨骨折、肋骨骨折、肩甲骨骨折、肺損傷などを合併することもあります。腋窩神経の損傷が多いとされており、その場合は上腕骨近位端外側の痺れや感覚低下が出現します。

診断
症状を見るとともに、レントゲン検査やCT検査で骨折型を評価します。腱板断裂の有無が治療法に影響することもあり、場合によってはMRIも追加します。
治療
保存療法
転移が小さい場合は、保存療法が選択されます。
三角巾+バストバンドによる固定を2~4週間行い、徐々に可動域訓練を開始します。

三角巾のみでは骨折部が不安定で、痛みや転位のリスクになるため、バストバンドを併用することが多いです。
手術療法
転移が大きい場合や、転移が小さくても早期の社会復帰やスポーツ復帰を望む場合は手術も考慮されます。
手術には金属製のインプラントを用いた骨接合術が基本ですが、骨折の形態によっては人工骨頭(関節)置換術やリバース型人工肩関節置換術も考慮されます。


固定期間中は上肢全体にむくみが出ます。固定直後から手指をしっかり動かして、むくみの消退と拘縮の予防をはかりましょう。
▶参考:日本整形外科学会
当クリニックでは、患者様の症状や治療に合わせた疾患別パンフレットをご用意しています。
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