骨粗しょう症

骨粗しょう症とは?

骨粗しょう症は、骨の量や質が低下し、骨が脆弱になる疾患です。
正常な骨は骨密度が高く、強度がありますが、骨粗しょう症の場合、骨密度が低下し、骨組織の構造が変化します。これにより、骨折や骨が崩壊しやすくなります。

骨粗しょう症は、特に閉経後の女性や高齢者によく見られますが、男性や若年層にも発症することがあります。一般的な骨粗しょう症の原因には、加齢、ホルモンの変化(特に女性の閉経後)、栄養不良、運動不足、喫煙、過度のアルコール摂取などがあります。

骨粗しょう症の症状

骨粗しょう症の主な症状は、骨折しやすさや骨折後の回復が遅いことです。
骨折の典型的な場所には、腰椎(腰椎圧迫骨折)、大腿骨の近位部(大腿骨頚部骨折)、腕の骨(橈骨遠位端骨折)などがあります。しかし、骨粗しょう症自体には通常痛みを伴いません。そのため、初期段階では気付きにくいことがあります。

骨粗しょう症の原因・病態

からだの中の骨は常に生まれ変わっています。同じように見えても、新たに作られること(骨形成)と溶かして壊されること(骨吸収)を繰り返しています。骨を壊す細胞(破骨細胞)は古くなった骨を溶かし、骨を作る細胞(骨芽細胞)は新しく丈夫な骨を作っています。

骨代謝のサイクル

骨粗鬆症は、このバランスが崩れることでおこり、骨がスカスカになってきます。
骨粗鬆症は圧倒的に女性、特に閉経後の女性に多くみられ、女性ホルモンの減少や老化と関わりが深いと考えられています。

骨粗しょう症の診断

骨粗しょう症の診断は、日本骨粗鬆症学会で推奨されている骨密度測定やX線検査などにより行われます。
骨粗しょう症の診断基準は以下の通りです。

骨密度測定

骨粗しょう症の診断に最も使用されるのは、骨密度測定です。
診断にはYAM(Young Adult Mean)値が用いられます。YAM値とは、20~44歳の健康な女性の骨密度を100%としたとき、自分の骨密度が何%であるかを比較した数値です。70%未満の場合に骨粗しょう症と判断されます。

当院では最新の骨密度装置(GE社)を使い検査しています。
GEの骨密度装置はスピーディーで確実な撮影が可能です。またそれにより患者さんにやさしい低被ばくな検査を提供しています。

骨量(%)診断
80%以上正常
70~80%骨量減少(骨粗しょう症予備軍)
70%以下骨粗しょう症
日本骨代謝学会が定めた診断基準(200年)

血液検査

骨は古い骨を壊す「骨吸収」と新しい骨をつくる「骨形成」という代謝を繰り返しています。その代謝の際に骨から放出される物質を血液検査で測定します。これを骨代謝マーカーと呼びます。この検査を行うことで治療薬の選択や治療効果の判定をします。骨代謝マーカーはまた、骨のビタミンKの不足状態を調べることや骨粗鬆症と似ている病気を区別することにも役立ちます。

TRACP-5b
  • 骨吸収マーカー
  • 基準値(mU/dl)
    • 男性170~590
    • 女性(YAM)120~420
P1NP
  • 骨形成マーカー
  • 基準値(ng/ml)
    • 男性18.1~74.1
    • 女性(閉経前)16.8~70.1
    • 女性(閉経後)26.4~98.2

治療開始後3~6ヶ月を目処に測定して、開始前の数値と比較して、改善具合を評価します。

臨床評価

骨粗しょう症の診断には、患者の臨床的なリスク要因や骨折の歴史なども考慮されます。これには、高齢、女性、家族歴、喫煙、アルコール摂取、運動不足、低体重指数(BMI)などが含まれます。

骨粗しょう症の予防と治療

骨を強くする食事

「骨をつくる栄養素」と言えば、まず一般的なのはカルシウムです。
しかし、カルシウムは体に吸収されづらい栄養素であるため、カルシウムの吸収を高めるビタミンD、吸収したカルシウムを骨に定着させるビタミンKなど、ほかの栄養素と上手に組み合わせていく必要があります。

カルシウム

骨と歯の材料となる大事な栄養素です。人の体の中に入ると99%が骨の中に貯蔵されます。
乳製品や大豆製品、魚介類、海藻類などに多く含まれています。

  • 1日の推奨摂取量
    •  650㎎(50~64歳女性)
    •  750㎎(50~64歳男性)
食べ物(1回に取る量)含有量(㎎)
牛乳(200ml1カップ)220
プロセスチーズ(1切れ)126
生揚げ(1/2切れ)144
木綿豆腐(1/2丁)129
いわし水煮缶(小1缶100g)320
鯖水煮缶(小1缶100g)260
うなぎ1切れ150
チンゲン菜(100g1/3株)100
小松菜(100g1/3株)170
すりごま(9g大さじ1)72
カルシウムの多く含まれる食べ物

ビタミンD

魚やきのこに含まれる栄養素です。ただし甲殻類には含まれないので注意が必要です。
日光浴でも作られるので「太陽のビタミン」とも呼ばれています。

  • 1日の推奨摂取量
    • 8.5μg(50~64歳女性)
    • 8.5μg(50~64歳男性)
食べ物(1回に取る量)含有量(㎍)
鮭(1切れ80g)26.6
サンマ(1切れ100g)15.7
鯖水煮缶(1缶100g)11.0
しらす干し(10g大さじ1)4.6
乾燥きくらげ(1個50g)4.3
まいたけ(1/2株50g)2.5
干ししいたけ(乾燥2個5g)1.1
ビタミンDの多く含まれる食べ物

ビタミンK

圧倒的に多く含まれるのは納豆です。
ほかにモロヘイヤや小松菜などの緑黄色野菜、海草などにも豊富に含まれます。

  • 1日の推奨摂取量
    • 150μg(50~64歳女性)
    • 150μg(50~64歳男性)
食べ物(1回に取る量)含有量(㎍)
ひきわり納豆(1パック50g)465
納豆(1パック50g)300
モロヘイヤ(1/2束50g)320
ブロッコリー(1/2株100g)160
小松菜(1/3束100g)210
ほうれん草(1/2束100g)270
豆苗(1/2束50g)140
ビタミンKの多く含まれる食べ物

適度な運動

適度な運動は、骨の密度を維持し、筋力やバランスを向上させるのに役立ちます。
しかし骨粗しょう症の予備軍やすでに診断済みの方が、激しい運動をすると骨折のリスクがあります。
医師のアドバイスの元、負荷の少ない運動をゆっくりと行うことが大切です。

オススメの運動1.片足立ち

テーブルなどの手が付ける物を補助にして片足立ちをします。床につかない程度に片足をあげて1分程度キープ、これを左右交互に1日3回ずつ行いましょう。

  • 姿勢をまっすぐにして行いましょう。
  • 支えが必要な人は十分注意して、机に手をついて行います。

オススメの運動2.スクワット

肩幅より少々広めに足を広げ、膝を90度に曲げて戻します。膝がつま先よりも前に出ないように、お尻を後ろに突き出すようにしながら、腰を落とします。5~6回を1日3回ずつ、安全のために椅子やソファの前で行いましょう。

  • 運動中は息を止めないようにしましょう。
  • 膝に負担がかかりすぎないように、膝は90度以上曲げないようにしましょう。
  • 太ももの前や後ろの筋肉にしっかり力が入っているか、意識しながらゆっくり行いましょう。
  • 支えが必要な人は十分注意して、机に手をついて行います。

当院ではこうした健康不安のある方へ、医師の作ったプログラムを元に理学療法士と共におこなうパーソナルリハビリ(自費診療)を行っております。気になる方は医師やスタッフにお声かけください。

薬物療法

骨粗しょう症と診断された方には、食事や運動療法だけではなく、薬による治療が必要です。
骨粗しょう症の治療に使われる主な薬を紹介します。

  • カルシウム製剤
    カルシウム不足を補うために使われます。食事で十分にとれない場合に使いますが、過剰摂取すると胃腸障害の副作用が出てきますので、服用量はしっかりと守ってください。
  • ビタミンD3製剤
    カルシウムの吸収を助けてくれる薬です。比較的安全な薬ですが、副作用には高カルシウム血症などがあります。
  • ビタミンK2製剤
    骨の形成を助けてくれる薬です。血栓を予防するワーファリンという薬との併用はできません。
  • ビスホスホネート製剤
    骨粗しょう症の治療に広く使用される薬物です。骨吸収を抑制し、骨密度を増加させる効果があります。
  • エストロゲン
    女性ホルモン剤です。女性ホルモンが減少する閉経後の女性は、骨密度が急激に減少する傾向にあります。そのため女性ホルモンを補うことで、骨量を増加させる効果があります。
  • カルシトニン製剤
    甲状腺から分泌されるホルモンの一つで、骨の吸収を抑制する効果があります。副作用にはほてり、嘔吐、動悸が見られることもありますが、通常注射の翌日には焼失します。

日常生活での注意点

骨を強くする食事や適度な運動に加え、喫煙や過度の飲酒を控えることも大切です。
喫煙や過度の飲酒は骨の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

骨粗しょう症の人は転んだ時に骨折を起こす可能性が高くなります。寝たきりの原因となる大腿骨骨折の8割以上は転倒が原因ともいわれていますので、骨粗しょう症では骨量の維持とともに転倒による骨折の予防が重要となります。

そして定期的な健康チェックや骨密度測定を受けることで、早期発見や治療の評価をすることができます。
当院で治療中の患者さんへは、〇ケ月ごとに治療の経過をチェックすることを推奨しております。
前回の検査から〇ケ月経っている場合は、検査の予約をお願いします。

骨粗しょう症チェックリスト

次の項目について、当てはまる部分の点数を合計してください。
あなたの骨の健康度がわかります。

牛乳、乳製品をあまりとらない2点
小魚、豆腐をあまりとらない2点
タバコを良く吸う2点
お酒がよく飲むほうだ1点
天気のいい日でもあまり外に出ない2点
体を動かすことが少ない4点
さいきん、背が縮んだような気がする6点
最近、背中が丸くなり、腰が曲がってきた気がする6点
ちょっとしたことで骨折した10点
体格はどちらかと言うと細身だ2点
家族に「骨粗しょう症」と診断された人がいる2点
糖尿病や、消化管の手術を受けたことがある2点
(女性)閉経を迎えた(男性)70歳以上である4点
参考:公益財団法人 骨粗鬆症財団 企画「骨粗鬆症 検診・保健指導マニュアル 第2版』(2014)

あなたの合計点数に当てはまる点数を押してください。

今は心配ないと考えられます。これからも骨の健康を維持しましょう。

院長からの一言

院長

骨粗しょう症は・・・