骨粗しょう症

骨粗しょう症は骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。日本では約1000万人以上の患者がおり、高齢化と共に増加しています。骨折は寝たきりや車いす生活の原因になり、死亡リスクを高めますが、適切な治療で50%は予防可能です。

当院では、骨密度検査をお勧めし、検査結果に基づいて治療計画を立てます。薬物治療に加え、転倒予防のリハビリも行い、骨折を防ぐ体作りをサポートします。

骨粗しょう症の原因・病態

骨は常に生まれ変わっており、古い骨を壊す「破骨細胞」と新しい骨を作る「骨芽細胞」が働き、骨の形成と吸収を繰り返しています。このバランスが崩れると骨が弱くなり、骨粗しょう症の原因になります。

特に女性、特に閉経後の女性に多く見られ、女性ホルモンの減少や老化が関係しています。

骨代謝のサイクル

骨粗しょう症の症状

骨粗しょう症の主な症状は骨折しやすく、骨折後の回復が遅いことです。特に、腰椎(腰椎圧迫骨折)、大腿骨(大腿骨頚部骨折)、腕の骨(橈骨遠位端骨折)などが典型的な骨折部位ですが、骨粗しょう症自体には痛みを伴わないため、初期段階では気付きにくいことがあります。

骨粗しょう症の診断



骨粗しょう症の診断は、骨密度測定やX線検査などによって行われます。日本骨粗鬆症学会では、以下の基準を診断に使用しています。

骨密度測定

骨粗しょう症の診断に最も使用されるのは、骨密度測定です。この測定では、YAM(Young Adult Mean)値が重要な指標となります。

YAM値は、20~44歳の健康な女性の骨密度を100%としたとき、自分の骨密度が何%であるかを示す数値です。一般的に、YAM値が70%未満の場合に骨粗しょう症と判断されます。

当院では、最新の全身型骨密度測定装置(FUJIFILM)を使用して骨密度検査を行っています。この装置は、スピーディーかつ確実な撮影が可能で、患者様にやさしい低被ばくの検査を提供しています。安心して検査を受けていただけます。

骨量(%)診断
80%以上正常
70~80%骨量減少(骨粗しょう症予備軍)
70%以下骨粗しょう症
日本骨代謝学会が定めた診断基準(2000年)

血液検査

骨は「骨吸収」と「骨形成」という代謝を繰り返しています。この過程で放出される物質を血液検査で測定することを骨代謝マーカーと言います。骨吸収を示す主なマーカーは「TRACP-5b」、骨形成を示す主なマーカーは「P1NP」です。

この検査により、治療薬の選択や治療効果の評価ができます。また、ビタミンKの不足状態や骨粗しょう症以外の病気の診断にも役立ちます。

TRACP-5b
  • 骨吸収マーカー
  • 基準値(mU/dl)
    • 男性170~590
    • 女性(YAM)120~420
P1NP
  • 骨形成マーカー
  • 基準値(ng/ml)
    • 男性18.1~74.1
    • 女性(閉経前)16.8~70.1
    • 女性(閉経後)26.4~98.2

治療開始後3~6ヶ月を目処に測定して、開始前の数値と比較して、改善具合を評価します。

臨床評価

骨粗しょう症の診断では、患者のリスク要因や骨折歴も重要なポイントです。主なリスク要因には、年齢(高齢)、女性、家族歴、喫煙、アルコール摂取、運動不足、低体重(BMI)などが含まれます。これらの情報を基に、診断が行われます。

骨粗しょう症の予防と治療

骨を強くする食事

骨を作るために大切な栄養素として、まずカルシウムが挙げられます。しかし、カルシウムは体に吸収されにくいため、吸収を助けるビタミンDや、吸収されたカルシウムを骨に定着させるビタミンKなど、他の栄養素と一緒に摂取することが重要です。

カルシウム

カルシウムは骨や歯の主成分であり、体内に入ると99%が骨に蓄えられます。カルシウムは、乳製品や大豆製品、魚介類、海藻類などに多く含まれています。

  • 1日の推奨摂取量
    •  650㎎(50~64歳女性)
    •  750㎎(50~64歳男性)
食べ物(1回に取る量)含有量(㎎)
牛乳(200ml1カップ)220
プロセスチーズ(1切れ)126
生揚げ(1/2切れ)144
木綿豆腐(1/2丁)129
いわし水煮缶(小1缶100g)320
鯖水煮缶(小1缶100g)260
うなぎ1切れ150
チンゲン菜(100g1/3株)100
小松菜(100g1/3株)170
すりごま(9g大さじ1)72
カルシウムの多く含まれる食べ物

ビタミンD

魚やきのこに含まれる栄養素です。ただし甲殻類には含まれないので注意が必要です。
日光浴でも作られるので「太陽のビタミン」とも呼ばれています。

  • 1日の推奨摂取量
    • 8.5μg(50~64歳女性)
    • 8.5μg(50~64歳男性)
食べ物(1回に取る量)含有量(㎍)
鮭(1切れ80g)26.6
サンマ(1切れ100g)15.7
鯖水煮缶(1缶100g)11.0
しらす干し(10g大さじ1)4.6
乾燥きくらげ(1個50g)4.3
まいたけ(1/2株50g)2.5
干ししいたけ(乾燥2個5g)1.1
ビタミンDの多く含まれる食べ物

ビタミンK

圧倒的に多く含まれるのは納豆です。
ほかにモロヘイヤや小松菜などの緑黄色野菜、海草などにも豊富に含まれます。

  • 1日の推奨摂取量
    • 150μg(50~64歳女性)
    • 150μg(50~64歳男性)
食べ物(1回に取る量)含有量(㎍)
ひきわり納豆(1パック50g)465
納豆(1パック50g)300
モロヘイヤ(1/2束50g)320
ブロッコリー(1/2株100g)160
小松菜(1/3束100g)210
ほうれん草(1/2束100g)270
豆苗(1/2束50g)140
ビタミンKの多く含まれる食べ物

適度な運動

適度な運動は骨密度を維持し、筋力やバランスを向上させるのに効果的です。しかし、骨粗しょう症の予備軍や診断済みの方が激しい運動を行うと骨折のリスクが高まります。医師のアドバイスを受けて、負担の少ない運動をゆっくりと行うことが重要です。

オススメの運動1.片足立ち

テーブルなどの手が付ける物を補助にして片足立ちをします。床につかない程度に片足をあげて1分程度キープ、これを左右交互に1日3回ずつ行いましょう。

  • 姿勢をまっすぐにして行いましょう。
  • 支えが必要な人は十分注意して、机に手をついて行います。

オススメの運動2.スクワット

肩幅より少々広めに足を広げ、膝を90度に曲げて戻します。膝がつま先よりも前に出ないように、お尻を後ろに突き出すようにしながら、腰を落とします。5~6回を1日3回ずつ、安全のために椅子やソファの前で行いましょう。

  • 運動中は息を止めないようにしましょう。
  • 膝に負担がかかりすぎないように、膝は90度以上曲げないようにしましょう。
  • 太ももの前や後ろの筋肉にしっかり力が入っているか、意識しながらゆっくり行いましょう。
  • 支えが必要な人は十分注意して、机に手をついて行います。

当院ではこうした健康不安のある方へ、医師の作ったプログラムを元に理学療法士と共におこなうパーソナルリハビリ(自費診療)を行っております。気になる方は医師やスタッフにお声かけください。

薬物療法

骨粗しょう症の治療には、食事や運動療法だけでなく、薬物療法も重要です。主な薬には以下のようなものがあります

  • カルシウム製剤
    骨の形成に必要なカルシウムを補うために使用します。食事で十分に取れない場合に補助的に使いますが、過剰摂取には胃腸障害などの副作用があるため、服用量は注意が必要です。
  • ビタミンD3製剤
    カルシウムの吸収を助ける役割を果たします。比較的安全ですが、高カルシウム血症などの副作用があるため、定期的な血液検査が推奨されることがあります。
  • ビタミンK2製剤
    骨の形成を助け、骨の健康をサポートします。ただし、血栓を予防する薬(ワーファリン)との併用は避ける必要があります。
  • ビスホスホネート製剤
    骨吸収を抑制し、骨密度を増加させる効果があります。骨粗しょう症の治療に広く使用される薬物です。
  • エストロゲン
    閉経後の女性に多く見られる骨密度の低下を防ぐために使用されます。女性ホルモンを補充することで、骨量を増加させる効果があります。
  • カルシトニン製剤
    甲状腺から分泌されるホルモンで、骨の吸収を抑制する効果があります。副作用にはほてり、嘔吐、動悸があることがありますが、通常は注射後翌日には収まります。

日常生活での注意点

骨を強くするためには、食事や適度な運動に加え、喫煙や過度の飲酒を控えることも重要です。喫煙や過度の飲酒は骨に悪影響を与えることが知られています。

また、骨粗しょう症の方は転倒による骨折のリスクが高くなります。特に大腿骨骨折の8割以上は転倒が原因とされており、骨粗しょう症の予防には、骨量の維持だけでなく、転倒を防ぐことも重要です。転倒防止のために、生活環境の安全対策やバランスを保つ運動が推奨されます。

定期的な健康チェックや骨密度測定を受けることで、骨粗しょう症の早期発見や治療効果の評価が可能です。当院では、治療中の患者様には〇ヶ月ごとに経過チェックを推奨しています。前回の検査から〇ヶ月が経過している場合は、検査の予約をお願いいたします。

骨粗しょう症チェックリスト

次の項目について、当てはまる部分の点数を合計すると、あなたの骨の健康度がわかります。

牛乳、乳製品をあまりとらない2点
小魚、豆腐をあまりとらない2点
タバコを良く吸う2点
お酒がよく飲むほうだ1点
天気のいい日でもあまり外に出ない2点
体を動かすことが少ない4点
さいきん、背が縮んだような気がする6点
最近、背中が丸くなり、腰が曲がってきた気がする6点
ちょっとしたことで骨折した10点
体格はどちらかと言うと細身だ2点
家族に「骨粗しょう症」と診断された人がいる2点
糖尿病や、消化管の手術を受けたことがある2点
(女性)閉経を迎えた(男性)70歳以上である4点
参考:公益財団法人 骨粗鬆症財団 企画「骨粗鬆症 検診・保健指導マニュアル 第2版』(2014)

あなたの合計点数に当てはまる点数を押してください。

今は心配ないと考えられます。これからも骨の健康を維持しましょう。

院長からの一言

院長

骨粗しょう症は・・・


当クリニックでは、患者様の症状や治療に合わせた疾患別パンフレットをご用意しています。
下記リンクからもダウンロードできますので、ご活用ください。