鵞足炎(がそくえん)

症状

膝の内側から膝下にかけての痛みがおきる傷害です。
熱感や腫脹を伴なうことがあり、膝の曲げ伸ばしなどの動作をする時に痛みが走ります。膝を完全に伸ばした時、階段の昇り降り、またスポーツで走ったり、ジャンプの着地やステップ動作などで痛みが生じます。

原因

鵞足とは

膝の内側には、縫工筋、薄筋、半腱様筋の3つ腱が集中していて、ハムストリングや内転筋などの筋肉につながっています。腱が集まった状態を後ろ側から見ると、ガチョウの足のような形に見えることから、この部分を「鵞足」と呼んでいます。

膝の曲げ伸ばしをするときに膝が内側に入る動作(外反)や、膝から下を外側にひねる動作(外旋)をしたときに、鵞足部分の腱と骨、または腱同士がこすれます。特に、走りながら方向転換をする時にこうした動作が行われるので、鵞足部に炎症が起こりやすくなります。

鵞足炎を発症しやすい動作

ランニングで足を後ろに蹴り出す時、サッカーボールを蹴る時、急な方向転換を行った時などに特に負担がかかりますので、これらの動作を繰り返すことで発症しやすくなります。
方向転換動作のないランニングでも、急に長距離を走った時などに起こりやすいと言われています。また、内股があると、外反動作と外旋動作が繰り返されるため発症リスクが高まります。水泳の平泳ぎのキックでも同様の運動が行われるため、平泳ぎは鵞足炎を起こす典型的な動作といわれています。

その他にも、足の内側に重心がかたよるような間違った靴選び、かかとの骨が内側に傾いている「回内足」、衝撃を吸収できないアスファルトのような硬い地面の走行、重心がかたよる坂道の走行なども痛みの原因となります。

診断

「運動時に鵞足部(膝下の内側)痛みがある」、「鵞足部を押さえると痛みを生じる(圧痛)」などの特徴的な症状が見られる場合に鵞足炎と診断されます。

基本的に痛みや腫れといった症状だけですので、膝の不安定性があったり、レントゲンで膝関節の他の組織に損傷が見られる場合は、別の障害の可能性も疑います。

治療

軽症の場合は、膝を使う運動を控えて安静を保つことで炎症が治まり、数週間で自然と治ります。痛みが強い場合は、安静を保ちつつ患部を冷やしたり、湿布などの消炎鎮痛剤を使って炎症を抑えます。痛みが治まってきたら鵞足部の筋肉のストレッチングやマッサージをして筋肉をほぐすのも効果的です。

重症時は痛み止めの注射や電気治療なども行われます。

急に痛みが発生した「急性」の場合は、患部を氷のうなどで冷やし、テーピングで固定します。症状が長く続いて慢性化している場合は、患部を冷やしたり固定・圧迫する行為は血行が悪くなり逆効果なので、患部を温めたり積極的に動かして血行を促進するのが正解です。

鵞足炎は再発しやすいので、焦らずじっくり治療しましょう。

予防

鵞足炎の根本的な原因は、膝の使いすぎと、良くない姿勢や動作フォームです。

自分のレベルに合わせた運動量を調整し、疲労の蓄積を感じたら十分な休養をとることを心がけましょう。
膝への負担を軽減するために、運動前後のウォームアップ、クールダウンはしっかり行ってください。普段から鵞足部やその周辺の筋力トレーニング・ストレッチを行い、筋力・柔軟性のアップを図りましょう。
ジョギングは、できるだけ柔らかい土の地面や平坦な道で行いましょう。

良くない姿勢やフォーム(走行時に膝が内側に入っている、かかとが外を向いている)を正すよう心がけます。内股や足の形が悪い人は、シューズの調整やインソールの使用によって重心のバランスを正常に保ちましょう。脚の形に異常がなくても、靴のサイズは合っているか、十分な衝撃吸収力はあるか、靴の底が斜めになっていないか確認しましょう。