大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)
症状
主な症状は、股関節の痛み・固さ・動きの制限です。その他の症状は次の通りです。
- 股関節を曲げた時に前面が痛い
- 長時間座ってると徐々に痛みが強くなる
- 股関節の可動域が減少する
- 階段を上る時や車に乗る時に痛い
- 長時間の歩行でも痛くなる時がある
その他には、あぐらをかく、靴下を履く、爪を切る、立ち上がる、足を組む、といった場面で症状が強く出ることもあります。
原因
股関節は、ボールと受け皿が組み合わさった球関節で、球状の「大腿骨頭(だいたいこっとう)」が受け皿の「寛骨臼(かんこつきゅう)」の凹部にハマって、大きく自由に動ける関節です。
大腿骨頭と寛骨臼の表面はそれぞれ軟骨で覆われており、この軟骨によって痛みを感じることなく、安定して滑らかに股関節を動かすことができます。股関節の軟骨には、関節の表面を覆う「関節軟骨」と、寛骨臼の縁を取り囲み大腿骨頭を包み込んで吸着する「関節唇(かんせつしん)」があります。
FAIは、大腿骨頭と寛骨臼のいずれか、もしくは両方に骨のでっぱりを伴う形態異常があることで、股関節を曲げたりひねったりする際に、関節の中で骨同士がインピンジメント(=衝突)を起こしてしまう状態です。股関節内で衝突が繰り返されると、関節唇が損傷してしまい、股関節痛の原因となります。
また、FAIによって関節唇の損傷が悪化すると、股関節の関節軟骨や骨まで削れてしまい、関節が変形する変形性股関節症に進行することが知られています。
FAIは、関節の形態と引き起こす病態より、3つのタイプに分類されます。
FAIの原因は現時点では完全には解明されていませんが、この過剰な骨は成長期にできるといわれています。また、アスリートの発症頻度が非常に高いことが知られています。一方で、FAIの骨形態があっても必ず痛みが生じるわけではありません。
症状は20~40代で自覚することが多く、症状がある場合は、関節唇や関節軟骨の損傷が生じており、今後の進行に注意が必要です。
診断
まずは問診と身体診察により、股関節の痛み、動きの制限、日常生活や運動の支障などを確認します。
FAIが疑われる場合はレントゲン検査とMRI検査を行ないます。レントゲン検査では変形性股関節症の可能性についても同時に診断が可能です。
治療
保存療法
- 特定の動作を避ける:
股関節内での骨の衝突は股関節を深く曲げる動作で起こるため、しゃがんだり、あぐらをかくような痛みを伴う動作を避けるようにします。痛みが緩和し、再発予防にもつながります。
- リハビリテーション:
最も重要となるのが、筋力訓練と柔軟体操です。
股関節や体幹(骨盤・腰部)の筋力と柔軟性を改善させることで、関節の安定性の向上や負担の軽減が得られ、痛みが緩和されます。
- 薬物療法:
痛みや関節内の炎症が強い場合は、必要に応じて鎮痛剤の処方やステロイド注射などの薬物療法を行ないます。
手術療法
股関節内での骨の衝突は股関節を深く曲げる動作で起こるため、しゃがんだり、あぐらをかくような痛みを伴う動作を避けるようにします。痛みが緩和し、再発予防にもつながります。
最も重要となるのが、筋力訓練と柔軟体操です。
股関節や体幹(骨盤・腰部)の筋力と柔軟性を改善させることで、関節の安定性の向上や負担の軽減が得られ、痛みが緩和されます。
痛みや関節内の炎症が強い場合は、必要に応じて鎮痛剤の処方やステロイド注射などの薬物療法を行ないます。
十分な保存療法を数カ月続けても症状が改善しない場合は、手術を検討します。
FAIと関節唇損傷の手術では、断裂した関節唇を縫合し、大腿骨と寛骨臼のでっぱりを削ります。近年では関節鏡(関節の内視鏡)を用いた手術が普及しており、小さい切開を数カ所作り、関節鏡で関節内を見ながら手術が行なわれます。