前十字靭帯(ACL)損傷

原因

前十字靭帯は膝関節の中で、大腿骨と脛骨(けいこつ)をつないでいる強力な靭帯です。

その役割は、主に大腿骨に対して脛骨が前へ移動しないような制御(前後への安定性)と、ひねった方向に対して動きすぎないような制御(回旋方向への安定性)の2つがあります。 つまり、この靭帯を損傷すると、膝は前後方向および回旋方向の2つの方向にゆるくなります。

スポーツ選手に頻度が高い傷害で、サッカーやラグビーなどのコンタクトスポーツにおいて相手チームの選手にタックルされて膝をひねったり、バレーボールのジャンプ後の着地、バスケットボールでの急激な方向転換・ストップ動作などによって、太ももと脛をつなぐ前十字靭帯が伸びたり切れたりすることで起こります。スキーなどでも多い膝の「けが」です。

症状

受傷時には『ブツッ』という断裂音を感じたり、膝が外れた感じがしたり、激しい痛みを伴ったり、徐々に膝が腫れて曲りが悪くなったりします。膝の関節内に出血が見られることは、大きな特徴の一つです。

主な症状
  • 膝の激しい痛み:
    歩けないほどの痛みを引き起こす場合があります。
    1〜2週間ほど経過すると炎症がおさまり痛みも軽減しますが、靭帯の損傷自体は回復していません。
  • 膝の不安定感:
    前十字靭帯損傷を放置すると、膝が不安定になる症状が現れます。立ち上がりや歩行など、膝に体重をかける際にぐらついたり、膝がガクッと崩れたり(膝崩れ)します。
  • 膝に力が入らない:
    膝が不安定になることから、膝に力が入らないこともあります。とくに、立ち上がりや歩行、階段の上り下りが困難になります。
  • 膝の動きの制限:
    痛みにより膝の曲げ伸ばしが制限されることがあります。。屈伸が困難になることで、日常生活に支障をきたします。
  • 膝に血が溜まる:
    前十字靭帯損傷には、切れた靭帯から出血し、膝関節内に血が溜まる場合もあります。血が溜まると膝が腫れ、動かしにくさや痛みなども伴います。

前十字靭帯損傷は急性期を過ぎると痛みと腫れが軽減するため、受診が遅れてしまう場合もあります。
しかし、一度緩んだ靭帯は自然治癒することはなく、放置すると関節内の半月板や軟骨を損傷し、変形性膝関節症を生じることがあります。この病気は進行してしまうと日常生活動作にも大きな支障をきたしてしまいます。

診断

前十字靭帯の安定性や損傷の程度を評価には、ラックマンテストという徒手検査があります。画像検査にはX線やMRIが用いられ、靭帯の状態や損傷の程度を評価します。MRIは特に柔軟な組織である靭帯の詳細な評価に役立ちます。

ラックマンテスト

大腿部を押さえた状態で下腿を前方に引き出して、靭帯による制動を確認する方法です。前方に引き出し、前十字靱帯の緩みが確認されたら、前十字靱帯損傷が強く疑われます。

治療

損傷した前十字靭帯はギプス固定などでは治りません。損傷後1か月ほどで痛みはとれ、日常生活に支障が無くなることがほとんどですが、それは損傷に伴う炎症が落ち着いたのにすぎず、靭帯は切れたままです、スポーツを行わない人ではそのままの状態でも支障がない場合もありますが、スポーツの続行を希望する方には手術を勧めます。

保存的療法

軽度の損傷や手術が困難な場合、安静や物理療法、ブレースの装着などが選択されます。

ブレース

手術療法

損傷が重度の場合やスポーツ復帰を目標とする場合は、前十字靭帯再建手術が選択されます。
通常、切れた前十字靱帯が自然に癒合することはなく、永続的に膝の不安定性と不安感が残ります。そのためスポーツを継続するのならば靱帯の再建手術が必要です。

スポーツ復帰

手術後や保存的治療後に、筋トレやバランス練習などの運動療法を通じて、膝の安定性の回復を目指します。術後のリハビリテーションにより、アスリートや選手がスポーツ復帰するためには、通常6か月以上かかるでしょう。

ACLは若年者のスポーツによる損傷や、ご高齢の方では転倒などによる受傷もあります。特に若年者の場合は手術が必要になることが多い疾患ですので、早めに医療機関を受診するようにしてください。

▶参考:日本整形外科学会
▶監修:辻本武尊(枚方大橋つじもと整形外科クリニック院長・医学博士)


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