脛骨近位部骨折
原因
外顆(外側)骨折が最も多く、特に骨粗しょう症のある高齢者ではちょっとした転倒などの低エネルギーで生じ、多くは関節面が陥没します。内顆(内側)や両顆骨折は交通事故などの高エネルギーで生じることが多く、コンパートメント症候群を合併することもあります。また靭帯損傷(内側側副靭帯損傷や前十字靭帯損傷)や半月板損傷の合併も多くみられます。
コンパートメント症候群とは
外傷などにより筋肉が腫れ、コンパートメント(骨、筋膜などの集まった区画)の内部の圧が高まって筋肉、神経、血管などが圧迫されてダメージを受ける病態の総称です。重症な場合には血流が途絶えて筋肉などの壊死を引き起こします。また横紋筋融解症や高カリウム血症により死に至る危険もあります。
症状
骨折部は不安定で変形を生じることが多く、痛みのため骨折した側の足を動かすことは困難です。関節部分に転移が起こると膝関節の腫れや関節内血腫を認めます。
膝窩動脈損傷による皮膚の色調不良や感覚障害、脛骨および腓骨神経損傷による運動・近くの麻痺、靭帯損傷による膝の不安定性といった症状を合併することもあります。
診断
レントゲン検査で診断しますが、関節面の骨折の詳細な評価にはCTが有用です。また転移の小さい骨折の場合はレントゲンでは診断が困難のため、MRIにより診断します。
治療
保存的療法
保存療法は全身状態や活動性の問題から手術が適応にならない患者さんにのみ選択され、隣接した関節を含めてギプスなどで固定します。
手術療法
- ずれが大きい場合は閉鎖骨折であっても一時的な創外固定を行うことがあります。
- 関節内骨折は、関節切開して直視下で解剖学的に整復し、強固な内固定を行います。
- 関節外骨折は角度の変形を矯正すれば低侵襲で内固定が可能です。
- 多くの場合はプレート固定が行われますが、関節面の転位がない、または軽度の場合は髄内釘による固定も可能です。
関節内骨折とは
関節面に骨折線が及ぶ骨折のことです。
関節の中では骨どうしが互いにぴったりと擦り合わなくてはなりません。関節の表面にわずかであってもズレが残ると、関節面のすり合わせが悪くなり、軟骨がすり減って、のちに変形性関節症と呼ばれる状態になり、関節の痛みや可動域制限が生じるおそれがあります。
そのため、関節内骨折の場合は関節面の転位を正確に整復して固定する必要があります。
関節外骨折とは
関節面に骨折が及ばない骨折のことです。関節内骨折と違って、関節外骨折ではある程度の転位やずれがあっても、その後の経過に影響はないと言われています。